「おひっこし」 沙村広明

「無限の住人」などで有名な沙村広明さんが”竹易てあし”名義で書いた…コメディ?ラブ…コメディ?……すいません全然ジャンルわかんないですごめんなさい。

※今回はなるべくネタバレ無しですが…

私は比較的マンガを内容で選ぶ…というのを気取っている方なのですが、実は結構ジャケ買い(死語か)もします。

初めて無限の住人を見たのは数年前…大学に入る前だったと思います。

絵がすさまじい迫力で圧倒されたのを覚えています。

というか「この人はなんで漫画を書いているんだ?」なんて的はずれなことを考えてしまうほどでした。

きっと人によっては「井上雄彦に匹敵する!」なんて言うでしょうが私としてはむしろ無限の住人を見ると絵は互角に近く、構成力は沙村広明先生のほうが紙一枚分上といった印象でしょうか。

あのレベルになるともはや読者が優劣をつけるのはおこがましいだけですね。

さて、この「おひっこし」は大学生たちの青春を描いたストーリーです。

沙村広明先生のすごいところはかなり登場人物の心情を細かく描いているところも挙げられますね。

絵もうまくてストーリーも良いなんて…!

まぁ題材は典型的な大学生の遠野が先輩で”大人の女”赤木先輩に惚れるというストーリー。

かなりわかりやすい題材ですが、そこに大学生特有の気だるさと熱さ、バンドや文学的要素を詰め込んでおりまさに沙村ワールドといった感じです。

ストーリー展開も遅くもなく早くもなく、それでいて主人公が成功しているようには見えないのにどこか成長している。

魅力的な女性陣とダメだが友人にしたい男性陣。

にも関わらず突然イタリアから殺し屋がきたり、赤木先輩の彼氏が海外協力隊から帰ってきたらとんでもないものを持ち帰ったり…とかなりシュールでコメディなラブストーリーです。

なんだろう、上手く言えないのですが前に進みたいという気持ちとそれでいて世間の厳しさを知って一歩引いてしまう自分とが共存しているのが大学時代で、それがとても良く描かれていると思います。

総評:大人と子供の間で甘酸っぱくもほろ苦い…突拍子もないのにどこか自分の世界と繋がりを感じる物語

沙村広明作品を読んだことがない人はハルシオン・ランチとか幻想ギネコクラシーあたりから読むのもオススメですが、「おひっこし」は女性でも男性でも面白い作品だと思います。

ぜひ一度その画力に圧倒されてください。

そしてストーリで2度びっくり、ギャグでもう一度びっくり…と良い意味であなたの期待に応えてくれるでしょう!

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