「ATOLS/MIKU DET EP」 ATOLS

見下ろす天の眼差しと 光と闇が織り交ざる アラベスク

ATOLSさんのニューアルバム「ATOLS/MIKU DET EP」を聴きました。

狂気の7曲

ズラッと並んだ7曲を通して聴いてみてもわかる通りかなりぶっ飛んでます!もちろんいい意味でね!
ブログで仰っている通り「死」をテーマにした珠玉の7曲なんですね。
なるほどゾンビ=死病、$149=無機質な死、ハデス=死神(冥界の神)、キメラ=個性の死、アドニス=愛の死、キーウィ=死や絶滅と捉えることも出来ますね。

ゾンビメーカー

1曲目のintroはまさにこのアルバムのイントロであり2曲目のゾンビメーカーへ繋がります。
ゾンビメーカーはネット上で公開しているもののロングバージョンでした。
かなりマジでネットのバージョン(以後ショートといいます)は完成度が高くて完成されていると思っていました。
1日中ループで聴いちゃうぐらいですからね…。
たった2分40秒ほどの曲でしたが十分ゾンビ感あるすげー曲だったんですよ!
それをロングバージョンで7分54秒って!蛇足じゃないの!?とおもって聴いてみてあらびっくり。
ショートの部分なんて序章に過ぎなかったんですよ!とか言っちゃう自分がいるんですよ!
てか実は曲自体前半と後半の二部作で出来ているっていう。
前半部分はまさにゾンビになった恐怖感と高揚感が激流のように襲ってきます。
脳をかき混ぜられているようなほんの少しの不快感と強烈な快感。
”命”への強烈な飢えや乾きを抱えて彷徨い歩く強烈なサウンド。
そして少しずつ崩壊し始め…ゾンビとしての自分すら保てなくなっていく。
まるでアラートのような音が鳴り響き少しずつあんなに激しかった衝動が失われていき…もしかしてゾンビが治るのか…。
でも最後も結局ゾンビとして死んでいく…そんな前半部分でした。
そして後半部分は虚ろな意識の中で「神様…」とつぶやく。
死を迎えゆったりとした気持ちでいられるのかと思えば、まるで自分の人生を走馬灯のように見せられているかのような強烈な疾走感。
死してなお強烈な生への執着なのか、それとも今まさに終わりを迎え昇華していくのか…。
そんな強烈な経験を経て最後は気持ちのいい朝の雑音が聞こえてきます。
あぁ、これは全部夢だったのかな…。

$149

冒頭の泡がはじけるような美しいカットアップのようなサウンドはまるで眼が覚めたばかりのよう。
目覚めたミクがまるで自分を再確認するかのように「$149」とつぶやきます。
「明日はどんな曲を作ろうか…。」
でも誰もいなくて「なんでいなくなってしまったの…?」
前半は朝焼けの街が、最後は夕焼けの街を思い浮かべてしまう曲です。

ハデス

インスト曲ですがこのアルバムでもよく使われている水音が冒頭にあります。
ヒューマンビートボックスの音量がちょうどいい感じ!(ここ重要)
ボカロをシンセにして鳴らしているそうです。
ハデスが近づいてくるような恐怖感と何故かほんの少し異国情緒のある不思議なインスト曲です。

キメラ

まるで手毬唄のような歌から仏教における「四苦八苦」を歌う仏教歌になります。
ここまではまるでフォークロアっぽい外国民謡なのですが、サビが半端なくカッコイイ!
もう文句無しでサビが今まで聞いてきたどんな曲よりもぶっ飛んでかっこいいんですよ!
サビの開放感を得るためにあえてAメロやBメロを仏教の念仏のようにしてるんじゃないかってぐらい!
サビが聞きたいからってサビまで飛ばすとなんか違うんですよ…全体を聞いててサビでぶっ飛ぶ感じが…こう解脱を表現しているみたいな?
もうなんか言葉じゃ表現できない素晴らしさ…ミクの声で「愛別離苦怨憎会苦」なんて聞けると思わなかったし。(Google日本語変換で一発変換できるのも衝撃でした)
生身は幻というのもすごい美しい言葉ですよね。
あれだけダラダラゾンビメーカーを書きまくっておいてなんですがキメラがこのアルバムで一番好きです。

牢獄のアドニス

美しいイントロから始まります。
アドニスは美しい人間で、アフロディテとペルセポネから寵愛された人間です…。(樹から生まれてるのでなんとも言えないですが)
もともとはミュラーという美しい王女が”美しい”ことを理由にアフロディテの怒りを買い、実の父親と一夜を共にさせられたあげく追放されてしまいます。
哀れに思った神々は彼女をアラビアで木にしちゃいます…。追い打ちでしょコレ…。
まぁとにかくその木にイノシシがぶつかって、パッカーン。アドニス誕生!マジかわいいアドニスを一目見たアフロディテがアドニスにぞっこんラブ!犯罪です。
そのアドニスをハデスの妻であるペルセポネに預けちゃう。案の定ペルセポネもアドニスラブ!
そんなこんなで二人の悪女に取り合われるアドニス。
結局ペルセポネの怒りを買ってアフロディテの旦那で有名な軍神アレスを口八丁でアドニスにけしかけてしまいます。
哀れアドニス、イノシシに変身したアレスの突撃されて死んでしまいます。アドニスはイノシシ運が無い。
アドニスの死後、流れでた血からアネモネの花が咲いたという…。
お母さんはアフロディテに嵌められて、息子はペルセポネに嵌められて…。
ちょっとアラビアンな素敵な曲です。

キーウィ

かわいい曲調と悲しげな詞が美しいです。
翼のない飛べない鳥、キーウィの悲しみが歌われています。
この曲は説明よりも聴いたほうが一発でわかります。
ロングバージョンなのでぜひCDで!
配信もされていますよ!

ATOLSさんの「ATOLS/MIKU DET EP」はAmazon、とらのあな、iTunes Storeで購入可能です。

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