[クリアレビュー]『Days Gone』はオープンワールドとゾンビ要素が調和した良ゲー

俺たち ここで終わっちまうのか?

どのように評価すればよいのか、本作に関してはとても難しく感じる。
というのもゲームとしての”マスターピース”と言えるほどではないが、普通のゲームとも言い難い。
ゲームの継続性という意味では、休み休み遊ぶことが多い私にしては珍しく一気にクリアまで楽しくプレイすることができた。

とはいえリソースの面では弾丸の補充や打撃武器の破損、ガソリンの補給や植物・スクラップの収集など手間のかかる面倒な側面もあった。

それでも本作は間違いなく良質なゲームであり、大作ゲームに飢えているプレイヤーにとって素晴らしい選択肢となるはずだ。

※ネタバレには配慮していますが、多少はあるかもしれません。面白いゲームですので、気になる方は読まないでプレイしちゃったほうがいいです。

ストーリーは良質でとてつもなくボリューミー

全体を通してストーリーはとても良かった。
荒廃した世界で親友と共に生き抜くという基本的な部分から、妻の死の影や生存キャンプそれぞれの事情、野盗や狂信者などが複雑に絡み合い織りなす物語はまさにプレイできる海外ドラマのようだった。

前半部分、特に冒頭は説明不足感もあり導入に少しだけ問題はある。
まだゾンビとまともに戦えない状態ではマップを探検するのは厳しいし、ガソリンや物資の心配もあった。
しかしすぐにガソリンなどの物資面でこのゲームがとてもユーザー想いだと気付かされるのだが、コープランドと初期の拠点周りは森ばかりのため冒頭部分ではガソリンを探すのが少し手間だった気はした。

ストーリーの導入部で魂とも言えるバイクを早々に失い、相棒であるブーザーも大きな災厄に見舞われる。
近所の生存者キャンプは陰謀論者が仕切っていて、主人公は死んだはずの妻を想い過去を振り返ってばかり……。

当初は先行きが非常に不安だったが、ストーリー1/4ぐらいでロストレイクキャンプへと向かうと八方塞がりだった状況にいくつかの明るい兆しが見える。
そこからは一気にストーリーに引き込まれてしまった。

つまりこのゲームにおいて序盤のバイク喪失~ロストレイクまでは恐らくチュートリアルなのだ。
早々に見切りをつけてしまった人にはぜひロストレイクというキャンプが出てくるまでプレイしてほしい。

想定外だったのがゲームのボリュームだ。
ロストレイクへと至った時点で私の感覚では「ここで半分だな」と思っていた。
リーパーとの戦いも激化し、過去の精算もしなくてはならない。
ロストレイク編が最終ストーリーだと思っていたのだ。

しかしクリアしてみるとロストレイク到達時点はストーリー全体の1/4程度、もしくは未満ぐらいだったとわかる。

昨今のゲームの中ではかなりボリュームのあるストーリー量だ。
オープンワールドでありながら散発的なクエストではなくゲームの中心に太く重厚なストーリーの柱が存在するため、多くのオープンワールドゲームが陥りがちな「メインストーリーそっちのけでサブクエばかりで自分の目的すら忘れてしまう」というようなジレンマは感じづらかった。

ゲームの最終盤になってからNEROのチェックポイントと大群の位置がマップに表示されるのも素晴らしいギミックだ。
まずはストーリーに集中してもらおうという開発者の意図をソフトに適応させている。

ストーリーを理解するにはひと手間必要

プレイ中に何度もクエストクリア後の”ストーリー”という主人公の独白のような短文を読むことが、物語を理解するためには必要な補足情報だ。
しかし”ストーリー”を読むにはミッションクリア後の短い表示でボタンを押すか、自分でポーズメニューから探さなくてはならない。
この”ストーリー”を読むか読まないかでずいぶん物語への理解度に差が生まれるだろうと感じた。

例えばリッパーの統率者であるカルロスの正体、ディーコンのアイアンマイクへの評価など不器用な主人公だからこそ、この本心から書かれた日記のような独白を読まなければ彼の心の動きは理解できないだろう。

特にサラにまつわる部分はこの”ストーリー”の有無で印象が大分変わってしまうので、もしまだ未読の場合は読んでみてもいいと思う。
これからプレイする方にはぜひ読みながら進めてほしい。

(ストーリー上ではアイアンマイクと考え方の違いから衝突しているが、ディーコンは当初からアイアンマイクのことを高く評価していることがわかる)

感染の描写が無いのでどういう仕組なのかはクリアしてもわからない

作中には感染までの描写が無く、いくつかのボイスレコーダーや会話によると概ね「噛まれる」ことでフリーカーになるような感じだ。
生きたまま変貌する際に高齢者と年少者はその細胞の変質に耐えられず死を招くというようなNEROの会話もある。

反面死体を焼却することに拘っている描写も多く見受けられる。
これは「お前をフリーカーにはせねえぞ」というような発言とともに行われることが多く、死体がフリーカーへと変貌することを示している。

作中での戦闘シーンではかなりの回数ディーコンがフリーカーなどの感染者と接触しており、感染したタイリクオオカミに腕を噛まれたりしている。
しかし御存知の通りディーコンはフリーカーにはならない。

ということは感染症が発生し一気に感染が広がり、そしてウイルス的なものは消滅した。
感染した人々は変貌してしまい、もう戻らないということだろうか。
しかしその考えを覆すシーンもある。

NEROの人間は防護服に身を包みガスマスクを付けている。
とあるシーンで洞窟内でフリーカーに襲われ瀕死のNERO職員は「スーツが壊れた」ため絶望している。
ガスマスクも明らかに破損が見られる。

目の前に防護服もガスマスクもつけないでウロウロしているディーコンがいるにも関わらず、ガスマスクとスーツが破損しただけで死を覚悟しているのだ。
もちろん相応の外傷を負っている可能性があるが、ここでひとつ重大な事実が存在する。

彼らNEROの防護服は特殊で、弾丸が効かないのである。
Serbu社の50BMGライフル、つまり対物ライフルをもってしても無傷なのだ。
もちろんこれがゲーム上の設定というかご都合的な面は否定しないが、それなりに強い装備のはず。
ゲーム中では特定の手段と幸運が重ならなければNERO職員を倒すことは事実上不可能な仕様となっている。

にもかかわらず「スーツがやられた…もう持たない…」という発言は気になるポイントだ。
ディーコンやその他の生存者がノーガードで空気を吸い込んでいる中で、なぜNEROだけはこんな動きづらそうなスーツを着ているのだろうか。

ガスマスクまでしているということはこの感染症が空気感染していることを示している。
飛沫や体液での感染であればガスマスクである必要はない。
NEROの規定上ガスマスクの装備が必要なのかもしれないが、物資も乏しい中で全員分揃えるのも大変だろう。
ガスマスクは先端に有害物質を吸着する吸収缶を取り付けるため、その交換のための資材も馬鹿にならない。
ということは現在でもキャリアからの空気感染があり得るとNEROは考えている、もしくはそういったデータがあるということだろう。

生存者の多くは人間同士の戦いにご執心であり、自らの感染症対策を徹底しているようには見えない。
このあたりの描写はゾンビと戦闘をするという戦闘パートとストーリーパートの間で少しばかり齟齬が発生しているように感じる。

とはいえ基本的には気にならない。
重防護のNEROを見て「おいおい、ずいぶん用心深えじゃねえかはっはっは!」と思う程度だ。

追記:エンディング後のやりこみ要素をクリアすることで衝撃の事実が明らかになる。
このガスマスクの意味は私達が考えているよりもずっと重かった……!

ほんの少しのバグ、PS4版よりは大きく改善されている

全体を通してバグは非常に少ない。
PC版としてリリースするにあたってしっかりと調整してあるようだ。
もちろんゲームシステムの多くはコントローラーに最適化されているように感じたが、マウス&キーボードでも違和感なくプレイでき、十分に快適だった。

私が遭遇したバグは致命的なものは一つもなく、バイクのエンジン音が鳴らなくなったこと、そしてイベントシーンで特定のキャラクターが表示されなかったことぐらいだ。(Ver1.03)

このシーンではディーコンの隣にスキッゾがいて、彼が発煙筒を持っているはずだが見えなくなっている。
そのため発煙筒が空中に浮いているような描写になっている。

スキッゾは嫌われ者だからしょうがない、うん。
正直この程度はバグでもなんでもないので、個人的には「バグはゼロ」と言っておきたい。

PS4版を発売日に買った友人が言うには当初はバグが頻発しており、壁が透明になる、設備が一切映らない、岩や木にめり込むなど不思議な現象も多かったそうだ。
この点でPC版は後発のため開発状況が成熟していたことはとても喜ばしい。

とにかくブーザーとディーコンを愛さずにはいられない

このゲームにおいて重要なのは愛だろうか?
私にとっては愛よりも何よりもブーザーが重要だった。

スキンヘッドで頭まで刺青の入ったセンスの最悪な汚いおっさんが、サラよりも何よりも愛おしくて仕方がないのだ。
世界が破壊されてもブーザーと共に生きるディーコンさえいればいい。

そう思えるほどにブーザーというキャラクターの強烈さ、愛嬌、生き様はこのゲームの中で一番に光り輝いていた。
サラというメインヒロインがいるにも関わらず、ブーザーで検索しようとするとサジェストに「かわいい」「ヒロイン」という文言が出てくるほどだ。

ブーザーは序盤こそディーコンのわがままに付き合って肉体的にも精神的にも不調となる。
プレイヤーはブーザーの態度に腹をたてることもあるかもしれない。

しかしゲームをプレイしていくとわかることなのだが、そもそもサラと離れ離れになって死亡したと確信してから約2年間、自暴自棄となったディーコンの世話をしていたのは他ならぬブーザーなのだ。
冒頭のヘリで脱出する際もサラとディーコンがふたりで乗れるように、自分は乗らないとすぐに意思表示できるほどに仲間思いで素晴らしい人物だ。

その後ロストレイクで大きな喪失を迎えた際も、ディーコンを責めることはなかった。

もちろんディーコンがブーザーに依存しているのと同様に、ブーザーもディーコンに依存している共依存のような関係にある。
作中で自暴自棄になったブーザーが全てを諦めそうになるが、ディーコンがいたからこそもう一度生き抜く決意をすることができた。

このように作中の現在進行系でブーザーと仲を深めていくことから、サラへの想いよりもブーザーへの愛のほうが深くなってしまうという恐ろしいゲームなのだ。
見た目はどう見ても『Far Cry』シリーズの敵キャラクターのようだが、子犬をこよなく愛す仲間想いの頼れる兄貴……。
もうディーコンとブーザーが話してるだけで嬉しい。

私の中でのことではあるが、様々なゲームをプレイしてきた中でもベスト相棒キャラクターと言ってもいいかもしれない。
本当にありがとうブーザー。大好きだぜ。

魅力あふれるキャラクターたち

本作にはブーザーの他にも魅力あふれる素晴らしいキャラクターが登場する。

アイアンマイク。
ロストレイクキャンプのリーダーであり、強力なリーダーシップと非暴力主義を貫く強い精神力の持ち主でもある。
暴力で解決するというゲームの仕様上仕方ないことだが、非暴力主義を掲げることは多くの困難が伴いアイアンマイク自身もそれをわかった上で必死に戦っている。
作中では様々なリーダーが登場するがアイアンマイクは唯一の人格者であり、頑固ではあるがそれは人の善性を信ずるが故である。

リッキー。
ディーコンやブーザーと一時期行動を共にしていたようだ。
さっぱりとしているが優しくディーコンの頼みはなんだかんだ聞いてくれる。
アイアンマイクと違い犯罪者には厳しいが、私怨ではなく客観的にキャンプ運営のために行っている。
無茶ばっかりするディーコンとブーザーを常に心配しており、無鉄砲な二人のお姉さんのような存在。

アディー。
とにかくいい人。
ロストレイクキャンプ、もしくはオレゴン州全域でも超レアな医者の一人。
じつは獣医さんだったりするのだが、一生懸命人を生かすために頑張っている。
姉御肌なので長女アディ、次女リッキー、長男ブーザー、次男ディーコン、三男スキッゾでパパがアイアンマイクみたいな感じに思えてくる。
本作をプレイしていると感じるのは男性は精神的に幼く描かれており、女性は力強く描かれているような気がする。

スキッゾ。
嫌いな人は多いと思うが、私は全編を通してプレイしても嫌いになることができなかった。
HIP-HOPスタイルのスキッゾは小狡い男で、何かと問題を起こすトラブルメーカー。
ディーコンを嫌いつつも認めており、アイアンマイクの部下でありながら暴力で解決するタイプだ。
しかし本人はあんまり強くないので、結局は裏切ったり騙したりというムーヴになってしまう。
ディーコンの立ち位置が平和主義のアイアンマイクと暴力主義のスキッゾの中間、ややアイアンマイク寄りなため、もしディーコンがもうちょい悪側だったらいいコンビになっていたかもしれない。

クーリ。
大好きなキャラクター。
常に冷静沈着で、デキる男という雰囲気。
ディーコンがサラにあげた指輪もきっと回収した装飾品の中から「お、これかっこいいじゃないか」と思って身につけたのだろう。かわいい。
ディーコンにすら慕われている。

ゲームシステムは探索、戦闘、バイクで面白い

本作はオープンワールドだがカジュアルな作りになっており、バイクで適当に走るだけでも十分に探索できる。
綺麗な景色、面白いランドマークや田舎の町並み。
個人的にはもう少し密度の高いオープンワールドが好きだが、オレゴンの田舎の雰囲気も楽しめた。
それでも田舎とはいえもう少し建物があっても良かったはずだ。
研究所の人たちはどこから通勤してたんだ?

バイクでの移動はストレスがなく素晴らしかった。
バイクに乗ったことがある方ならわかると思うが本作のバイクはバイクを超越した何かなのでスムーズだ。
どちらかというとスノーモビルの挙動に近い。

ただ木にぶつかろうが岩にぶつかろうがたいして問題がない反面「これで!?」と思うような落車があり死亡することがあった。
ゾンビを引っかけようが、時には十数メートルの高さから落ちても大丈夫なのに枝で落車したりする。
落車時のダメージは体が物理法則で他の物体に接触するたびに判定があるようで、高所から勢いよく落車しても死亡しない場合があるが一方でただの路肩でフルHPから死亡したりする。

戦闘はこれといって不満が無い出来だった。
もともとはPS4独占だったためコントローラーでの操作が基本となって作られているようだが、マウス&キーボードでの操作に驚くほど最適化されていた。

人によってはもっさりしていると感じるようだが、確かに高速戦闘ができるような競技性のあるTPSと比べればもっさりしているだろう。
しかし多くのゾンビが出てくるようなTPSタイプのゲームからみれば軽快な方だろう。

道中のイベントやクエストなどはおつかいタイプが多く、その点では少し不満に感じた。
しかしバイクでの移動が楽しく、ファストトラベルもあるためそれほど苦に感じないというのが正直なところだ。
『Red Dead Redemption2』のようにゲームの道中で様々なショートクエストが発生するような要素は乏しい。

バイク上での戦いは少し不満がある。
オートエイムで敵を狙ってくれるのだが、『Grand theft Auto』シリーズのようにフリーエイムのほうがありがたかった。
ゲームパッド向けの調整なのかは不明だが、バイクに乗っていればゾンビに追いつかれることは稀なので引き撃ちを防ぐための配慮かもしれない。

バイクに乗って、同じくバイクに乗った敵を追いかけるタイプのクエストもあるが、終盤はスナイパーライフルがとても強いためバイクに乗らずに、逃げる敵のバイクをスナイプするほうが楽だったりする。

大群の存在は本作を刺激的にする最高のスパイスだ。
序盤からその脅威を認識しつつもプレイヤーにとっては災害のような存在であり、決して挑むべきではない。
しかし序盤、中盤、終盤と進むにつれて少しずつ対処できるようになるのだ。

私は特にゲーム中に入手した「特殊武装」つまり投擲武器や設置式の地雷・爆弾といった特殊な武器を使うのが面倒で、一切使わないことも多い。
そのためゲーム中で突然「投擲武器を使え!」みたいになってもどのボタンかすらわからなかったりする。

しかし本作では様々な武器やトラップを全て駆使しないと大群には対処できず、必要に駆られて使用法を習得してしまう。
終盤こそ銃だけでも十分に戦えるが、その成長感も嬉しい。

総評:ゾンビオープンワールドを”楽しめる”

ゾンビのいる世界というのは、現実であれば恐ろしい。
しかしゲームの世界では「テーマパーク」だ。
いかにゾンビの驚異を感じさせつつ、爽快感やカタルシスのある戦いを提供できるかという点で本作は素晴らしい作品だ。

ゾンビゲームは多数あるが本作においてゾンビの存在は適度な障害になっており、他の作品のように陳腐化しすぎていない。

コロナで外出できずつまらない休日を過ごすのであれば本作でオレゴンの田舎町へとトリップしてしまおう。
ゾンビも倒せるし、デートシミュレーターのような要素もある。
最愛の相棒と同棲したり、キャンプ生活、軍隊生活まで楽しめる。

本作の続編はキャンセルされたという噂もあるが、署名活動をしている熱心なファンもいるようだ。
”続編を求めるのであれば定価で買うべきだ”の言葉通り、私はPSplusで本作をフリープレイで入手していたがPC版を定価で購入した。
だがPS4版は当時からスペック不足だという噂を感じていたので購入しなかったので、続編を求めていい立場かは微妙なところだ。

それでもぜひ続編を遊んでみたい。
当然PCでだ。

Steamでの売上が好調であれば続編に期待ができるかもしれない。
その際はぜひPC同時リリースとしてほしい。
やはりTPSはマウスでプレイしたいのだ。

最後に表現規制についてだが、本作のSteam日本語版は独自バージョンとなっており表現規制がされている。
規制無しのワールド版を購入することも可能だが、日本語が入っていない。
言語ファイル自体は生で存在しているようなので、両方購入すればワールド版で日本語というのも不可能ではないようだ。(バージョン1.2当時)

個人的には規制版でも何ら不満はなかった。
プレイする上ではそれほど必要なものではないし、別にゾンビを肉片にしたいわけでもない。

しかし表現規制を許すとどこまで侵食されるかわからず、アサシンクリードのような頭のおかしい規制版を押し付けられる可能性もある。
プレイヤー側で選べるようにしてくれればいいと思うし、バージョンを分けてくれても構わない。
規制の先にあるのはゲーム業界のゾンビ化かもしれない。

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