[FSD] G-HOPEはこれから怪奇派レスラーになるのだ

一体何を言っているんだ・・・!

タイトルがあまりにもアレでびっくりした人もいると思うが、割と本気で書いている。

きっかけは先日放送があった『フリースタイルダンジョン』だ。

大好きな番組で毎週欠かさずに観ており、10/9の放送に登場したチャレンジャー・G-HOPEは以前も出演しており自然と名前を覚えたMC(ラッパー)だった。
(といってもHIPHOPに関しての知識は全く無い)
今回の出演に関してSNSなどで辛辣なコメントを複数見かけたが、私の印象は少し違ったので殴り書きのような文章になってしまったがひとつの意見として読んで頂けると嬉しい。

読んでいただければわかると思いますが、この記事において登場する人物を批判する意図は一切ありません。

※本文中は敬称略とさせて頂いております。

FSD初登場で大活躍

フリースタイルダンジョン1度目の出演では韻を踏むことに長けたモンスター・裂固に対して果敢に長い韻を踏みながら戦い、拮抗した熱い試合展開で魅せる。

惜しくも2-0でG-HOPEは負けてしまったが新モンスターお披露目の場でもあった2代目モンスター登場の初回放送で裂固の長所である手数の多いライムを見事に引き出し、さらに自分の長所もしっかりと表現することができた好カードであった。

1-1となっていればもしかしたらと思わせるだけの勢いとパフォーマンス。
敗れた後も「もしもう一度出たら・・・」そんな期待を抱かせるような伸びしろを、多くの視聴者が感じたはずだ。

見た目も色白でイケメン、敗戦後のコメントも自ら「実力不足」としっかりと負けを認めており好青年といった雰囲気。

しかし2度目の登場はある意味で期待以上だった。

高校生ラップ選手権王者


「フリースタイルダンジョン」も有名だが、「高校生ラップ選手権」を知っている人も多いはずだ。
出場資格は高校生であることだけで、年齢・性別・国籍は不問。
なんなら高校に在籍していなくても16~18歳なら出場可能という敷居の低さと、超高校級の試合展開というハードルの高さが特徴の日本の若手MCGの登竜門的イベントだ。

G-HOPEは第11回は2回戦敗退、第12回は準優勝、そしてついに第13回で優勝した超実力者。
高校生とはいえ一線級の実力者も多く、優勝争いをするような出場者となると間違いなくHIPHOPで大成するといっても過言ではないほどレベルの高い大会だ。

優勝後はMCバトルは引退し音源に集中するとも言っている。
実際G-HOPEの音源はどれもレベルが高く、MCバトルをスパッと辞めるというのは好印象だった。

2度目のフリースタイルダンジョンへ

しかし引退するはずだったG-HOPEは2度目のフリースタイルダンジョンへと潜り込む。
放送日のチャレンジャー、一人目は若手注目株の藤KooS

とてつもない高速フロウなのに聞き取りやすくバトルをすればまるで音源のようなクオリティで聞いていて気持ちがいい。
モンスター・ACEとの戦いでは突然ギアを上げて超高速フロウを繰り出したりと持ち前のスキルの高さを披露した。

素人目ではあるが、まるで音源のようなフロウにこれでもかとワードが詰め込まれているので湧きどころが分かり辛いのかもしれない。聴き入ってしまっているのもあるだろう。
ACEの貫禄と迫力に負けてしまったが十分に爪痕を残したのではないだろうか。

藤KooSの次に出てきたのがG-HOPEだった。

サングラスとファッションでダークな雰囲気

以前はラフな格好で出場していたが、優勝者ということもありだいぶ雰囲気が変化。
サングラスをかけて目線は全く見えず、服装も黒でまとめておりダークな印象。
スタイルもかなり変化している。

バトルが始まると以前とはかなり方向性を変えてきているようにみえる。
まず得意のライムは少なめにして、フロウをかなり意識しているようだ。
ステージ上のモーションやアクションはT-Pablow、間のとり方や語尾はLick-Gの雰囲気を少し感じ取れたような気がした。
これらのMCに共通する独特の雰囲気をステージ上で放っており、まさに新世代の印象。
以前は長いワードで綺麗に韻を踏むタイプだったが、この日は全く違うスタイルへと変貌していた。

進化することは好意的に受け取るべきだろうが、残念ながらまだ完成形とは言えないのだろう。
数少ないオリジナリティのある部分はどちらかというと空回りしてしまい、聞き覚えのある部分はレプリカだと感じてしまう。

裂固戦はあれほど質量を感じた2ラウンドが、今回はとてつもなく軽く感じた。
対戦相手のモンスター・崇勲の言っていることは全て突き刺さってしまい、苦笑したタイミングすらシンクロしてしまった。
同じラッパーとして土俵に立っているはずが、いつしか年齢通りの大人と子供が戦うエキシビションマッチのように思えてきた。

審査員LiLyの「今っぽいラッパーなのはわかる」「ラッパーぽい」「オリジナリティが見たかった」というのは現時点のG-HOPEを示す見事な表現だろう。
大胆なチャレンジが意図せず最近流行りのラッパーの表面だけをトレースしたような形に見えてしまったのは残念極まりない。

悪い部分ばかりではなくサンプリングのラプンツェルの部分など要所要所は鈍く光っていた。
若干乱れたとはいえ豊臣秀吉と尊みで踏んだ部分が会場ではわかりづらくてちょっとキツいところも。
とはいえ以前は確かに韻の合間に同じことを言ってしまったり、空間を埋めるようなワーディングがあったため進化の方向としては間違っていないように思える。
ただ賭けに出た部分で尽くコインの裏が出てしまっただけだ。

Twitterなどでも否定的な意見が多かったが、個人的にこれは”ヒールターン”ではないかと感じている。

どんなヒールにも黒パン一丁の時代がある

少し話が変わるが、プロレスの世界には長く辛い下積み時代がある。
どんな輝かしいトップ選手でも必ず下積みがあり、成長していく姿をファンは共に見守り楽しむことができるのだ。
新日本プロレスではデビューしたばかりの若手選手を「ヤングライオン」と呼び、全員が黒いパンツ一丁で戦う。
この期間の選手は基本的にベビーフェイス(正統派)なレスラーであり、まだ世界観を構築できていない。
ヒールの素質や怪奇派の素質があろうとも、正統派の戦いが常に求められる。
この下積みの時代の中で少しずつ自分の中のキャラクターが育っていき、いずれ自由なコスチュームに身を包んだ一流の選手へと成長するのだ。

現在、どれほどの悪行をリング上で披露しているレスラーもこの下積みの時代から自分のイメージを変化させてヒールとなっている。
そこで「いやおまえヤングライオンだったじゃん!」などと無粋なイジりをする人は少ない。
レスラーに限らず人間は常に成長するものであり現在がかっこよければそれを評価するべきで、プロレスファンの多くは選手の成長の過程すら楽しんでいる。
そしてそれはラッパーに対する評価にも通ずる。

今回の放送でモンスターを煽る姿やインタビューでの強気な発言などは、少しずつG-HOPEが自分の世界観を構築し始めていることの証左だろう。
彼はこれまでのイメージを払拭して自分だけのイメージをセルフプロデュースしている真っ最中なのだ。
インタビューで語っていた「メンタル的に自信を持てるようになった」というのも、自分の中で目指すべきイメージが確立されてきたことと無関係ではないだろう。

一度付いた”ベビーフェイス”の印象を完全に拭い去るのは簡単なことではない。
ましてや現代はSNSや動画共有サイトによって過去の記録が気軽に閲覧できてしまう。
それでも凡百のイメージから抜け出すために、そして飾らない本当の自分を全面に押し出すためにも自己演出はアーティストとして必須の条件なのだ。

新しい船出

ここでタイトルを回収したいのだが、G-HOPEはこれからベビーフェイスのレスラーがある日を境に突如としてヒールへと転向する「ヒールターン」の時期なのではないだろうか。
それまで品行方正だったレスラーが海外修行などの短い期間で突如ヒールになって帰ってくるというのは冷静に考えればとてつもなく異常なことだ。
ヒールに成り立ての時期はやっぱりいろいろ違和感を感じるのも間違いない。
キャラクターが変わる時期というのはどうしても見ている方も恥ずかしい状況になりがちだ。
それでも経験を積み魅力的なヒールとなって人を惹き付けるようになるレスラーも多い。

例えば俳優であればミナミの帝王で有名な竹内力が銀行員だったというのはご存知だろうか。
哀川翔がティーン向けの雑誌ポップティーンの記者だったことも。
今でこそすごい世界観を持つ人も若い頃に意外な職業に就いていたりする。

ひたむきにラップと向き合う少年の時代を終えて、新しいスタイルを自らの力で手に入れたG-HOPEの快進撃はこれからだ。

※追記

フリースタイルバトルの世界では有名な「戦極MCBATTLE」で開催された「U-22 MC BATTLE」にG-HOPEが出場した。
公式DIGESTとして一部がYoutubeで公開され、冒頭でMC龍とのバトルを8小節分だけ見ることができる。
FSDでのチャレンジがいい形で実を結んでいると感じた。
世間にどのように言われようともチャレンジし続ける姿が最高にHIP-HOPだ。

「U-22 MC BATTLE」はDVDとして発売されている。
32人の将来有望な若手MCが揃った激アツのバトルは必見。

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