[ショートレビュー]余すところなくご馳走に!問題作『Ravenous Devils』をプレイしてみた。

[閲覧注意]ショッキングなスクリーンショットがあります、ネタバレを含みます

食への探究はつまり人類の歩みである。
美味しいものからクセの強いものまで、愛好家たちが世界の果てまで食べに行く。
そして誰しもが一回は考えたことがあるであろう「人を食材にしたら……?」という倫理的にヤバすぎる題材をなんとゲームのメインに据えてしまったのが本作『Ravenous Devils』だ。

あまりにも理解し難いと思うのでもう一度言うが本作は「人肉を提供する酒場の話」だ。

httpss://store.steampowered.com/app/1615290/Ravenous_Devils/

仲良し夫婦の秘密のしごと

理不尽が蔓延る邪悪な街へと引っ越してきた夫婦。
彼らは一件の店舗を購入し1階&地下を料理屋とキッチンに、2階を仕立て屋として営業を始めた。

仕立て屋は夫のパーシバルの役割。
料理屋は妻のヒルドレッドが専門だ。

お互いの仕事への干渉はないが、その役割分担は実に洗練されている。

つまり仕立て屋に来た客を夫であるパーシバルが殺し、衣服を剥いだ上で死体を地下の調理場へと落とす。
死体から剥ぎ取った遺留品である洋服は、手直しされ吊るしの衣服として仕立て屋の店頭へと並ぶ。
死体は地下で妻であるヒルドレッドが受け取り、ミンチにしてバリエーション豊かな肉料理として生まれ変わるという寸法だ。

ここまで読んで目眩がする読者の方はぜひブラウザバックしていただきたい。
筆者ですら改めて文字にして書いていると鳥肌が立つほどだ。

ちなみにこれはまだ序の口である。

ミンチになんとか耐えられた私はゲームを進めたが、調理法が増えるのにそう時間はかからなかったのだ。泣

あまりにもクレイジーな調理法の数々

調理法はミンチだけかと思いきや、他に2種類の調理法がアンロックされていく。

序盤から使用できるミンチですら人間が丸ごと入る巨大なミンチマシーンを嬉々としてぶん回すヒルドレッド、そして飛び出すミンチというショッキングすぎるシーンとなっている。

他2種も余りにもクレイジーな描写であり、特に最後の調理はもうあまりにもアレなので覚悟した方がいいだろう。
あくまでショートレビューなのでネタバレを避けるために触れないが、人によってはトラウマになるかもしれないということだけは伝えておきたい。

料理も凄まじい。

レシピがあるのだが、そのすべてに人肉が使われる。(1品だけ違うが、人肉じゃないだけでヤバさは変わらない)

小麦や野菜類も使うが、野菜に関しても死体が関わっているのでもうカニバリズムフルコースといった様相だ。

ちなみにこのゲームのポイントとして「客は人肉を食べているとは知らない」。
主人公たちは密かに各地を転々としながら人肉料理を振る舞っているのだ。

ただし人肉を食べさせることに快楽を覚えるというわけではなく、仕入れコストゼロのお肉として人肉が使用されているだけであり、作中でも主人公の夫婦が人肉を食べているところシーンはなかったということはお伝えしておきたい。

お金を儲けたいという気持ちがメインのようで、孤児の子供とかに容赦なく人肉パイをあげるぐらいイカれている反面、自分たちでは食べていないように見える。
稼いだお金でバカンスに行きたいという人並みの目標もある。

ハンニバル・レクター博士は自分でも食べてたし、旅客機の機内で子供にあげていた。
しかし本作の主人公夫婦は人に食べさせておいて自分たちは食べていないようなので、よりヤバさが際立っている気も。

(クリアした上で食べている描写はないと思いましたが、もしかしたら私が見落としているだけかもしれません。)

ゲームシステムはよくある2Dのクリックゲームだが奥行きが若干あるので、ミスクリックは起きやすいと感じた。

翻訳は問題あり

全体を通して翻訳には難があることは書いておかねばならないだろう。
ほとんどの場面では意図は伝わるが、文法がおかしい場面は多い。

また同じ内容を2~3回繰り返したり、相手のセリフを違うキャラが言っているかもしれない場面に何度か遭遇した。

夫婦がお互いを「ハニー」「ダーリン」のように呼ぶ場面があるが、夫側が妻に向かって「ダーリン」と呼ぶシーンなどもあったりと呼称ルールが定まっていないのか、もしくは翻訳パートミスなのだろうか。

アップデートで簡単に直るとは思うが、日本語を実装してくれただけで感謝したい気持ちもある。
直らなくてもなんとなくわかると思うので問題ないといえば問題ない。

攻略上のヒント(ネタバレあり)

簡単な攻略のヒントを書いておく。

・死体は放置しても腐らない(たぶん)。営業時間中は死体をキープしておき、翌日に一気に加工するべき。

・一度トレーに載せた材料や料理を除去したいときは、キッチン右側の壁沿いにある流しに持っていくことで中身を捨てることができる。

・開店前に肉の加工、裁縫、マネキンへの陳列などをすべて終わらせておく。特に肉の加工は時間がかかるので開店前にやっておきたい。

・同じく開店前に料理用陳列棚に補充した上でさらに料理を作って作業台の上に置いておく(ただし作り置きは作業台の数、テーブル席の有無などで後半は逆に邪魔になることも。陳列棚を最大アップグレードするまでのその場しのぎだ。)

・テーブルアップグレードはある程度余裕ができてからの方が良い。一気に忙しくなるし作り置き作戦が通用しなくなる(ただし収入は一気に増える)

・同じく食材をアップグレード(開放)すると、レシピが増えて一気に煩雑になる。まずはお金をためて作業台やオーブンのアップグレードをしよう

・野菜を開放すると温室も開放され作業が増えるので要注意。ただし温室の作業は基本的に開店前に行えば十分な量が確保できる

・ジンを開放しておけば、テーブル席の注文時間をリセットできるようになる。後半は基本的に常用する必要があるので早めに開放したい。

・裁縫はマネキン数+1までキープできる。ミシンで作成済み状態にしておけば、欠品したらすぐに補充できる。

・分かり辛いが温室の鳩小屋みたいなやつもプランター用の「肥料」で卵を生産する。

・お手伝いの少年が雇えるようになったらすぐに雇いたい

・前半はそうでもないが、後半は肉が足りなくなるのでパーシバルをサボらせないできっちり客を倒すこと。肥料用も考えると1日4体でいっぱいいっぱい。

・物語の途中で猫をもらえるが、この猫は実は最終盤の食糧問題解決の救世主。客が注文することはないが、セルフサービス用の食材をゲットしてきてくれる。とにかく焼こう。

・そもそも現バージョンでは中盤辺りから「注文→調理→提供」をどんなに急いでも客の待ち時間が長く、イエロー状態になってしまう。
なので逆に急がずレッド状態まで待ち、お手伝いの少年がジンを提供して待ち時間をリセットしてくれたタイミングで料理を提供することも必要

アップグレードの優先順位は人によって違うと思うが、個人的な印象は以下のとおりだ。

①:作業台(トレーを乗せるところ)
作業台をアップデートできると序盤の陳列台不足を一気に改善できる。
料理をキープしてもよし、並行して調理するもよし。
3個までアップグレードできたらミンチ・ソーセージ・ステーキを先に並べておくなどの時短術も可能だ。(同じ種類の注文が連続すると破綻するが)

②:陳列台(セルフサービスの食品を置けるところ)
陳列台をMAXまで上げれば、補充が必要ない日もでてくる。
後々テーブル席の調理で手一杯になることもあるので、なるべく上げておきたい

③:オーブン(調理するところ)
少なくともオーブンは2台稼働しているとかなり便利。
2から3は余裕のある時で良い。3系統一気に調理するのは最終盤ぐらい。
食材を一気に並べても、3台目を動かすときには1~2台目は調理を終えている。

④:装飾(お客が待ってくれる時間が長くなる)
お客は待ち時間が長いとキレて悪評をつけてくる。
アンロックのタイミングはよく覚えていないが、序盤の終わりあたりでイベントが挟まれ買えるようになった。
早めに3段階アップグレードしたい。

⑤:ジンの樽
客の待ち時間ゲージのリセットができる。
序盤はヒルドレッドが自分で持っていかなくてはならずあまり効果を実感できないが、後半はかなり便利。

⑥:マネキン
2階の仕立て屋の陳列数が増える。
このゲームにおいて陳列数はすなわちバッファ(余裕)なので、できるだけ増やしておきたい。
序盤はヒマなパーシバルも終盤はお肉生産で忙しいので洋服はできれば開店中は作りたくない。

⑦:肉加工量アップ
ひとつの死体から2個しか生産できない食肉加工系のマシンから、お肉が3つ取得できるようなるアップグレード。
ミンチ・ソーセージ・ステーキそれぞれにアップグレードがある。
中盤は肉が余ると思うが、終盤は肉が足りなくなるので先を見越してアップグレードしておきたい。

EX:お手伝い君
お手伝いを雇うことでヒルドレッドは調理のみに集中できる。また配膳・食品陳列などを自動でやってくれるのでプレイヤーにも余裕が生まれる。
ある意味でゲームの第二段階となりゲーム性が変化する。
EXにしたのは、アンロックされたら真っ先にアップグレードするべきだから。
アンロックのタイミングは目標の一人目をクリアしたあとだと思われる。

EX:猫の椅子
終盤の最終兵器。
陳列棚用の食料として超優秀なネズミを捕まえてきてくれる。
唯一の人肉じゃない料理を作れるのは猫さんのおかげ。
終盤は食材がカツカツになりやすく、特に肉が足りないので本当に助かる。
ただし撫でると一定時間後にネズミをくれるので、一気に生産するのは難しい。
開店前に時間をかけて作るか、開店中に足りなくなったら使う程度でも便利。

逆にアップグレードするのに覚悟が必要なものは以下の通り

①テーブル
テーブルはセルフサービスではないのでオーダーのものを作らなくてはならない。
序盤は料理の数が少ないのである程度予想が可能だが、後半になって食材が増えるとかなりめんどくさい。
序盤の早い段階でテーブルを増やすとヒルドレッドが過労死するので、作業台をアップグレードしてからの方がいい。

②ソーセージ&ステーキ
食材が増えると作れるものが増えるし、高価なものも作れるようになる。
とはいえ序盤は3種類だったレシピも最終的には約20種類となる。
余裕が出てきたら少しずつ増やしたい。

③野菜
上と同じ。さらに温室管理が必要になるため何も考えずにアップデートすると結構きつい。

とはいえアップグレードがイベントのトリガーになっているかもしれないので、どんどん開放してしまって問題ない。
キツイときもあるかもしれないがそもそもあまり難易度の高いゲームではない。
ミスっても問題ない事が多いのでどんどんチャレンジしてしまっていいはずだ。

総評:ヤバいゲームだが時間・資源管理は堅実で楽しい

一見ヤバい題材であるカニバリズムを扱っているゲームだが、その特異性に反してゲーム自体はかなり堅実に作られている。
突飛なこともないし、ゲームバランスも崩れない程度にアップグレードやイベントが発生し飽きさせない工夫がされている。
他のゲームのように管理だけをさせられるのではなく、ちゃんとストーリーとエンディングがあるのも良い。

音楽も作品の雰囲気にあっており、近現代のロンドンの雰囲気にぴったりだった。
建物のグラフィック、街の雰囲気も美しい。

プレイ時間は4時間程度とされており、私は5時間ほどかかった。
難易度はかなりイージーで惰性でプレイしても十分クリアできるだろう。
難易度選択はない。

ストーリーは短く少しチープだが、主人公二人のキャラクターは陰鬱な殺人+食人というテーマとは対象的に明るく前向きで面白い。
人肉料理を作るというイカれた手法を取りつつもある程度の計画性を持ったサイコな夫婦というのは破滅的で冒涜的で刹那的な魅力がある。

520円という価格を考えると素晴らしいゲームだったと言っていいはずだ。
短いながらもしっかりと纏められており、エンディングもプレイヤーに想像の余地を残してくれている。
個人的には二人はきっちり仕事をこなして、バカンスへと向かったはずだ。

その反面、題材が題材だけに人を選ぶゲームでもある。
私は軽度の血液恐怖症のためやはり少し手が震えてしまう場面もあった。
耐性のない人にとっては厳しいかもしれない。

また殺人・カニバリズムといったタブーをストレートに描いているため宗教的に無理な人もいるかもしれない。

設定等でモザイクを掛けたり、表現をマイルドにすることはできない。
今後のアップデートで実装されるかもしれないが、この直接的な表現こそがこのゲームの重要な部分のような気もしないでもない。
隠せばいいってもんでもないような気もする。

正直に言えば気持ち悪い題材を扱っているが、最後までプレイさせてしまうような悪魔的な魅力も兼ね備えている本作。
体験版もあるので、ぜひに……とは言わないが気になった方はプレイしてみてほしい。

httpss://store.steampowered.com/app/1615290/Ravenous_Devils/