「羊の木」を読んで思ったことなどない。
ただただ、周りの人が信用できなくなってきた―――。
※微ネタバレ注意
「羊の木」著者:いがらしみきお 原作:山上たつひこ
イブニングを何回か読んでいる頃にどうしても気になったので買ってみました。
まだ3巻までしか読んでいないのであまり細かく感想は書けませんが、少し思ったことを書いてみます。
突如現れる奇妙な隣人、それは漫画の世界だけと言っていいのだろうか
「羊の木」は難解な話ではありません。
たった1行の説明で事足りるほど単純なテーマです。
それは「国の政策によって市民にも秘密で釈放された犯罪者を定住させる」というお話です。
一瞬かなり突拍子もないように思いますが、よく考えれば私達は隣人の犯罪歴なんか知りません。
物語のように一度に大勢引っ越してきたりはしないでしょうが、確実に我々の周りに犯罪者はいるはずです。
刑務所の新規入所者数は平成21年の犯罪白書で3万人(28,963人)近く、最近の平成25年で2.5万人(24,780)です。
出所者数は満期や仮釈放などありますが総数としては年間3万人近くが彼らの言う”娑婆”へ出てきているのです。
年間3万人もの人間が…非常に例えは悪いですが例えばゾンビになるとしたらどうでしょう。
1年で3万人ものゾンビが世に解き放たれたらきっと世界は2~3年で終わりそうです。
もちろん、人間誰しも間違いは必ずありますし、きっと刑務所で悔い改めて深く反省した人が世に出てきていると信じたいですが…。
例えば傷害致死ぐらいなら初犯で情状酌量の余地があればたいがいお弁当=執行猶予がつきます。(殺人でも執行猶予になった判例ありますし)
刑務所に入るっていうのは逆に大変そうですよね、初犯ならよっぽどの犯罪じゃなければ執行猶予ついちゃうみたいですし。
ってことは初犯でしかも執行猶予つかないで刑務所入るなんてそれこそ強盗殺人・強姦致死とか…。
まぁ刑務所に入っている人は再犯者が多いので、小さな犯罪でも積もれば入所ですから…。
日本の再犯率は45%近いのでしょうがないですが。
そういった人たちが年間3万人も世に解き放たれているわけです。
とはいえ、誤解なきように言っておきますが彼らは「罪に見合う罰を受け償った」と法律的に認められています。
過去に犯罪歴があってもそれを理由に差別してはなりません…が、アメリカなどでは小児性犯罪者などはGPSで位置を常に監視されています。
そう考えると日本の「罪を償えばオッケー!」っていうのもちょっと怖いですよね。
私のくだらない話が長くなってしまいすいません。
まぁ要するに「あなたの日常に突然元犯罪者が紛れ込んだら?」というお話です。
これがどれだけ怖く、そして私達の周囲にあふれているか理解していただけたでしょうか?
例えばあなたがアパートに住んでいて、右隣が元殺人犯、左隣が元強姦犯だったりしたら…そしてそれを知ってしまったら?
私だったら怖くて逃げてしまいます。(年間3万人も世に出ているのにどこに逃げるんだか)
最初こそ突飛な話だと感じていましたが、全く突飛でない事がわかって人間不信になりそうです。
怖いのは犯罪者だけじゃない?大きな陰謀とは?
さて、怖いのは犯罪者だけではありません。
犯罪者を集団移住させることを住人には秘密で進めた市長たち…。
そして冒頭で「誰も責任を取らない」とまで言っているのです。
政治を無闇に盲目的疑うことほどバカなことはないのですが、確かに私達は住人の中に何%ぐらい元犯罪者がいるか知りません。
そしてそれを聞いても教えてはもらえないのです。
その元犯罪者が犯罪を犯しても、人権を理由に隠していた市や県や国も、被害者の人権を踏みにじり加害者の人権を守ろうとする怪しい市民団体も誰も責任は取りません。
これだけの情報社会ですからある程度氏名から情報は探せますが…。
話が脱線しまくっていますが、それだけ私にとっては衝撃的でした。
総評:誰しも遭遇する可能性のある”マイナスの可能性”的存在である元犯罪者と、私達の日常を溶け合わせた挑戦作
マンガの中は常に非日常ではありません。
事実は小説よりも奇なり。
私達は常に交通事故や天災、身体的不調…そして元犯罪者というリスクと隣り合わせで生活している。
守りたい存在のいる人間にとってそのリスクから逃れたいと考えるのは自然で、元犯罪者がいくら罪を償っていてもどうしても悪意に対する「根源的恐怖」を抱いてしまうことを実感したマンガだった。
※この記事は犯罪者の方及び元犯罪者の方を批判する意図は一切ございません。筆者は「犯罪を犯した者は相応の刑をもってその罪は償われる」と考えており犯罪歴の有る無しは、日本国憲法第14条の”すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。”ことから差別してはならないと考えております。