『ソウルハッカーズ2』無機質なダンジョンと色鮮やかなキャラクターたち

Game

ネタバレがあります

書いてるやつについて

感想を書くにあたって筆者について書いておきます。
一応『真・女神転生デビルサマナー』と『デビルサマナーソウルハッカーズ』はプレイ済み。
ペルソナやメガテンシリーズ、ライドウ、アバチュなどもプレイ済み。

PC最適化は高評価

Steam版で遊んでいるがPCへの最適化がしっかりとされておりゲーム内、特にダンジョンではラグなども発生していない。
CS向けのゲームの多くが最適化・調整不足でPCでは不安定になることがあるが、本作はまったく問題なかった。
画面サイズなども複数対応しており設定変更も簡単だ。
ウルトラワイドモニタには対応していないようだが、設定を間違えているだけかもしれない。

ただ筆者の環境ではマルチモニタのためかスタート時ゲーム画面がメイン以外の画面に映ることがあり、その場合は設定を変更しても反映されなかったりとちょっとした不具合はあった。
しかしこれはディスプレイポートの応答の問題など特殊な環境だから起きることだと思われる。

コントローラーはXBOX ONEのワイヤレスを使っているが問題ない。
キーボードでの操作も直感的でわかりやすい。

前作のことは忘れて楽しむべき作品

この後グチグチと文句を書くかもしれないが、前置きとして筆者は本作をかなり楽しんでプレイできていることを知っておいてもらいたい。
前作と比較すると色々な不満点は出てくるが、頭を机に2~3度叩きつけて「ソウルハッカーズ」「ペルソナ」「女神転生」といった単語にまつわる記憶を消してしまえばかなり楽しめる作品だ。

正直このクオリティなら「ソウルハッカーズ」の名を冠する必要はなかったと感じた。
『新サクラ大戦』のようにずっと昔の前作との関係を中途半端に持たせるぐらいなら、スッパリと断ち切ってしまって新規IPで立ち上げるべきだっただろう。

個人的には十分満足できる作品だったことはしっかりと明言しておきたい。

主人公たちが大人なのは新鮮

海外のRPGをプレイしていればそれほどではないだろうが、JRPGをプレイしているとキャラクターがティーンであることが多い。
アトラスも『ペルソナ』や『十三機兵防衛圏』などがそうだろう。
少年少女の成長譚も面白いが、大人だからこそ描ける青春のようなものや深い人間関係もあるはずだ。
どちらが良いとかいう話ではないが大人を主軸に据えたRPGがもっとあってもいいだろう。

ただ本作のキャラクターは大人というには少し子供っぽい気もする。
大人である演出上の利点がバーでビール瓶ラッパ飲みする程度であれば少年少女でも問題なかった気がするが……。
あとはミレディが鉄仮面の元カノというぐらいだろうか。

個人的な印象だがペルソナ5の面々のほうが大人だったような気がする程度には子供っぽい大人が揃っている。
でも自分を鑑みてみると年齢的には大人だが中身はバカなクソガキなのでリアルといえばリアルだ。

前作ではスプーキーやランチといった明確に”大人”であるキャラクターも出てきていたのでそういう存在が主人公たちの身近にいても良かっただろう。
ヴィクトルですらちょっと先祖返りしてノリが軽くなってて面白いのだ。

ストーリーはとっつきやすい

ストーリーが難解になりがちなアトラス作品の中でもかなりわかりやすいストーリー展開となっている。
情報の海から生まれたリンゴや正義を名乗るサモナー集団ヤタガラスと悪のダークサマナーであるファントムソサエティという構造もわかりやすい。
主人公たちは立場の違いから呉越同舟となるが、少しずつ信頼しあえるようになっていく。

ペルソナのようにプレイアブルキャラクターがパーティ人数を超えることもないので、最初の段階でフルメンバーが揃うのも嬉しい。
反面主人公たちの加入があっさりなので少しご都合主義的な面は否めない。

またストーリーがわかりやすいとはいえ人が死んだり敵サモナーが明確に「死んだ」という会話があったりとデビルサマナーシリーズのダークな世界観はそれなりに残っている。

ストーリーの主軸に関しては比較的駆け足で淡白なのは少し気になった。
世界の終わりについてもあまり実感がないまま戦い続けるので動機付けがはっきりしていない感も。

サバトシステム採用の戦闘、良い面と悪い面

本作は女神転生シリーズで採用されているプレスターンシステムの派生型が採用されているとのこと。(インタビューより)
しかし行動順といった概念はなく、味方側攻撃ターン→(サバト)→敵側攻撃ターンと明確に敵味方の攻撃フェイズが分離している。

サバトシステムはペルソナシリーズでいうところのダウン→総攻撃のような役割を持ったシステムだ。
本作では弱点属性による攻撃で基本的に1ターンにつき1人1回、最大で4回分のサバトストックを貯めることができる。
毎ターンの終わりに1つでもスタックが溜まっていた場合はサバトが発生し全体ダメージを発生させるという仕組みだ。
なかなか爽快ではあるし、ターンごとにダメージを増加させることができるため攻略上ありがたい。

だが一見すると毎ターン全体攻撃を行うことができるためペルソナの総攻撃システムの上位互換のように感じるが、実際はかなり荒削りな出来だ。

ペルソナのように”ダウン”という判定がないため、ストックを貯めたとしても敵は攻撃してくる。
またペルソナではクリティカルなどでもダウンしていたが、本作は属性攻撃のみでしかスタックを貯めることができない。
サバトをしないという選択肢が存在しないのにクエストで「○属性でとどめを刺せ」というクエストがありサバトの自動発生で倒してしまい辟易することも。

ダウンさせる事ができないのでペルソナのときのような戦略的なパズル的要素はなく、ひたすら同じ属性攻撃ができる悪魔を複数体用意して4人で4回属性攻撃をするという捻りもなんにもない戦術が一番有効となる。

またペルソナのように「すべての敵をダウンさせる」必要がないため一体を集中的に同じ属性で4回攻撃してもスタックはちゃんと4つ溜まってしまう
つまり属性を切り替えながら臨機応変に攻撃する必要がないので戦略感がないのだ。

様々な補助スキルがあるが、結局は属性攻撃を複数持つ悪魔を作るためあまり採用するタイミングがないのも残念だ。

更に厄介なのが「サバトを強化するスキルの存在」だ。
そのスキルを悪魔が所持しているとサバトを行う際に一定の確率で何らかの効果をもたらしてくれる。
たとえば味方を回復&状態異常除去、敵全体に毒、敵全体に睡眠などだ。
このスキルは一定確率と言ってはいるがスタックを4つ貯めるとかなりの確率で発動する。(私の体感)
つまりスタックを4つ貯める→全体攻撃→全体回復→敵の攻撃を受ける→スタックを~……というような若干不安定だがハメ技っぽいものが存在する。
この状態を維持するためには4人が弱点を狙い続ける必要があり、とにかく4スタックを狙うんだという身も蓋もない戦略が最適解になりかねないのだ。

ペルソナシリーズや女神転生シリーズをプレイ済みだとさらに厄介で、敵の弱点属性がなんとなくわかってしまうという問題もある。
本作では所持していない悪魔は弱点などがわからない状態なのだが、モコイを見た瞬間に「あ、コイツ風属性に弱かったよな……」とわかってしまうのだ。
もちろん全てがそうだとは言わないが、シリーズ履修者はかなりの確率で所見で弱点看破できてしまうだろう。
ペルソナであればダウンを取る一助程度だが、本作では弱点さえわかっていればサバト→回復のコンボがそれなりにキマってしまう。

もちろん言うほど簡単ではないし本作では敵が状態異常をかなりしつこく狙ってくるのでうまくいかない場合もある。
一応ある程度スキルや持ち物で対処可能ではあるが。
ただそういったシチュエーションはボス戦ぐらいなので中ボスぐらいまでならこの戦法はかなり通用している。

このサバトをひたすら狙うのが正解というレベルデザインは4人の仲間の役割分担を崩壊させているのが残念だ。

前作『ソウルハッカーズ』に目を向けてみると、主人公とネミッサ、そして仲魔を前衛3、後衛3で並べるという仕組みで戦っていた。
サバトのようなお手軽なシステムはなかったが、仲魔の性格システムや敵のバックアタックで前後の隊列が入れ替わるなど面白いシステムもあり、なにか継承しても良かったのではないだろうか。

クエストの動線、マークなどはアクセシビリティ不足

プレイしているといくつかクエストを受けるが、その行き先はマップなどで表示されず「REQUEST」を確認しないとわからない。
受注時に「○○街へ行って」みたいに言われたのを覚えていないのであれば進捗ごとに毎回確認する必要がある。
唯一倒すべき悪魔はダンジョンで出会うとシンボルの上にマークが出るが、出現場所などはわざわざ「ENEMY」の該当の悪魔を表示しないとどこにいるかわからない。(そもそも出会ってないと表示すらされない)
ちなみに「ENEMY」の欄でもマークされていないので「REQUEST」見て、一度閉じて、「ENEMY」を見て・・・・・・あぁ、もうなんて名前だったっけ!?となったらもう一回「REQUEST」を見に行こう。

ダンジョンに散らばった仲魔たちに探索中に出会うとランダムでいくつかの報酬をくれるのだが、クエストで集めるアイテムを仲魔からしか入手できない場合があり、運要素なのだろうがあまり集まらずに周回めいたことをしたこともあった。

せめて街の行き先を選ぶときにクエスト関係があればマークするなどの最近のゲームでは当然となったアクセシビリティは備えていてほしかった気はする。
ハードボイルドというのは不便さのことではないだろう。

クエスト周り以外のデザインはアトラス最良クラス

先程述べたようにクエスト周りのデザインはあまり優れていないが、それ以外についてはむしろアトラスゲームでも最良クラスのユーザーフレンドリーな作りになっている。

操作が直感的でわかりやすく、説明がなくても戦闘や移動などはスムーズに適応できた。

コンバート周りなどは少しボタンを押す回数を削減できるとは思うし、ダンジョンのマップ表示など少し改善できるであろう点もあるがそれ以上にプレイしやすい工夫が随所に施されている印象だ。

ゲームを止めるときも、タイトル→終了までの流れもわかりやすい。(個人的にはメニューからすぐデスクトップに戻りたいが)

ダンジョンの無機質さ

本作はメインストーリーにかかわる複数のダンジョンの他に仲間たちの精神世界である「ソウル・マトリクス」というダンジョンが存在する。

『ペルソナ5』におけるパレスに対するメメントスのようなものだが、その実態はメメントスからはかけ離れている。

メメントスでは仲間たちとそれほど広くないフィールドを持つダンジョンが階層式になっており、下へ下へと攻略していくという形だったはずだ。
怪盗団の軽快な掛け合いとモルガナカーを利用したスムーズな探索はそれほどストレスが溜まることもなく、また階層式になっているため達成感や進捗状況がわかりやすいという利点もある。
途中にショップなどもあり、階層の間では休憩室で会話したりと飽きさせない工夫が随所に散りばめられていた。

しかし本作の「ソウル・マトリクス」は信じられないほど淡白で無機質で単調で代わり映えのしない空前絶後の虚無空間である。
仲間の深層心理や精神に入るという仕組みで、主人公リンゴを除いた3人の仲間がそれぞれ「ソウル・マトリクス」が用意されているのにすべて背景やテクスチャが同一なのだ。

ミレディは恋人への執着などから女王の宮殿のような雰囲気とか。
アロウは天涯孤独の孤児である寂しさから牢屋のような雰囲気とか。
サイゾーは陽気な雰囲気は仮面だからサーカスのような雰囲気とか。

素人考えだが色々やりようはあったのではないかと感じた。

序盤に開放されるダンジョンは湾岸倉庫→中央地区放棄路線→第14号放棄路線だった。
もちろん地下鉄のテクスチャは使い回しなので全然代わり映えしないダンジョンを2回連続で攻略させられる。

この街は放棄された地下鉄だらけなのか、それとも開発の工程圧縮なのか。
ちなみにこの地下鉄ダンジョンは繋がってるわけでもなんでも無く、普通に2回連続でメインストーリーの行き先として2種類の放棄された地下鉄が登場するのだ。

葛葉マンゲツの潜伏先なのでマンゲツがたまたま地下鉄が好きなのかもしれないが、ゲームの演出としてもう少しプレイヤーの目に映る風景を変化せたほうが良いんじゃないだろうか?
地下鉄のテクスチャを使いまわしたいのであればストーリー前半と後半に出すとかできなかったのか?

(中央地区放棄路線)

(第14号放棄路線)

どのダンジョンも基本的に「使い回しができるように」できており、同じ風景を何度も見ることになる。
『ペルソナ5』のパレスなどはどんどん景色が変わる楽しさがあったが、本作は徹底的に地下鉄であれば線路orメンテナンス通路、港湾であればコンテナorコンテナだ。

驚かないでほしいのだがソウルマトリクスに比べて「ペルソナ3のタルタロスのほうがダンジョンとして面白い」ということは伝えておきたい。
あっちも無機質な階層が続くが宝箱やいくつかの階層ごとに中ボス的な敵がいてメリハリがあった。

正直このダンジョンの作りに関しては言い訳できないほどの手抜きだろう。
こんな虚無空間になるストーリー上の必然性がないのだ。
開発中の仮置きしたダンジョンがそのまま採用されたのではないかと不安になる。

これでGOサイン出るのは開発の問題よりも経営側の政争の結果ではないだろうか。
プレイしてる人でソウルマトリクス面白くて止めれないという人がいたら是非お話を伺いたいほどだ。
テストプレイも社内でしているはずなので間違いなくこのソウルマトリクスなどのダンジョンが無機質すぎることを指摘した人はいたはずだ。いなかったら激務でみんな疲れてるのだろう。

おまけ:ソウルマトリクス地獄

上の画像はアロウ・ミレディ・サイゾーそれぞれのソウルマトリクス第一層の風景である。
まったく別々のダンジョンで、それぞれそれなりに広い(見えてる範囲の10~20倍ぐらいのサイズ感だろうか)
問1:どこが違うのか比べてその違いを述べよ(20点)

筆者に違いはわからなかった。
ちなみに色味が少しずつ違うのはダンジョンのライティングがゲーミングよろしくゆっくり点滅しているからで、スクショのタイミングを待てば同じ色味にできるだろう。

 

「いやいや、このレビュー書いてるやつアンチだろ。どうせ第二層に行ったら雰囲気変わるんだろ?」

筆者もそう思ってましたが恐ろしいことに第二層の風景はこんな感じ。↓

おんなじだぁ!

もしかしてこういう拷問なのか?

ソウルマトリクスにおけるクエスト。

ダンジョンがつまらない風景でも、クエストなどの目的を設定すれば面白いはずだ。
ソウルマトリクスにもクエストが存在しており、ゲームを盛り上げてくれる存在……ではない。

1つのエリアに3つのクエスト(階層ごと)があり、それぞれのクエストは対象の違いなどがあるが「基本的に同一である」

エリア掃討は指定の悪魔を6体ぐらい倒すクエスト。
○○回収はエリアに散らばった仲魔に話しかけてアイテムを貰うクエスト(6個ぐらい)。
敵性体○○はエリアのどこかにいる中ボスを倒すクエスト。

このクエストがアロウ・ミレディ・サイゾーのソウルマトリクスごとに存在する。

つまりまったく同じような風景のソウルマトリクスで、まったく同じようなクエストを3回/3セットクリアしなくてはならない。
そして次の階層でも対象が違うだけのまったく同じ内容のクエストが出てくるのだ。

まったく捻りもなにもない、虚無が虚無を生み出した信じられない手抜きクエストだ。
ソシャゲのデイリーミッションのほうがまだマシではないだろうか。

しかもこのクエスト報酬が強化素材程度なので何やらされてるんだろうという気分になる。

本気でソウルマトリクス周りの実装は褒めるべきところが一つもない。
強いて褒めるならまったく同一の風景のダンジョンを別々のものだと言い張る面の皮の厚さだろうか。

ちなみにクエストクリアしてもキャラ同士の掛け合いなどは一切ない。
淡々と終了するだけだ。

虚無で無機質で何もないソウルマトリクスで無価値で無意味なクエストをクリアさせられる。

人によって心の中はまったく違う心象風景を持っているというペルソナと違い、この世界の人間はまったく同じ心象風景を共有しているのかもしれない。
もしくはアトラスにはこのダンジョンの違いがわかる人がいるのかもしれない。

クイズメーカーでソウルマトリクスの風景だけで誰の第何層のエリアか当てれるか、アトラスの人に挑戦してもらいたいものだ。

悪魔との交渉システム撤廃は心底呆れた

前作『ソウルハッカーズ』では悪魔との軽妙な会話を楽しむことができた。
理知的で話せば分かる悪魔もいれば、どの選択肢を選んでもブチギレる変なやつもいた。
同じ会話パターンで攻略できないことも多く、ドキドキしながら選択肢を選んでいたものだ。

うろ覚えだが会話の報酬はこんな感じだ。

会話を選ぶと悪魔がサモナーに何かを問いかけてくる。
1~3回程度の会話選択の後、悪魔は以下のような行動に出る。

・無条件で仲魔になってくれる(大成功)
・仲魔にはなってくれないが何かアイテムなどをくれる(成功)
・条件を突きつけてくる(微成功)
・キレて襲いかかってくる(失敗)

実は単純な好感度だけではなく複数の隠しパラメータによる複雑な調整がされているため一筋縄ではいかない悪魔との予測不可能な会話が楽しめるのだ。

しかし本作ではなんと悪魔は「HPくれたら仲魔になる」「お金くれたら仲魔になる」「アイテムくれたら…」というようにほとんどの場合対価を要求してきて、それを払うと必ず仲魔になるのだ。

つまり会話を駆使して無条件で仲魔になるという嬉しさもなく、ただ悪魔のカツアゲを受け続けるだけ
払えば仲魔になる。払わないと去っていく。
しかも戦闘中は一切悪魔との会話はないし、できない。
ダンジョン上に散らばった仲魔に紹介される形でしか悪魔とは出会えないのだ。

戦闘中に死にかけて会話に一縷の望みを賭けてみたり、何度も口説いてやっと仲魔にするというスリルや思い出に残る出会いなど無いのだ。
ただそこにはPP活よろしく悪魔を金やアイテムで釣り上げるなんの感情もないやり取りがある。

いっそここまで簡易な会話になるならメルカリもしくはTinderみたいな悪魔出会い系アプリで悪魔とメッセージでやり取りして仲魔にしたほうがデジタル感があって良くないだろうか?

リンゴと仲魔が会話するシーンは今のところ無く、一方的に話しかけてくるだけだ。
せっかくパーティに4人いるんだからサイゾーとかがおばあちゃん系悪魔をナンパして口説き落としたりすればいいのではないだろうか。

会話が売りじゃない『ペルソナ5』だって戦闘中に命乞いしたり交渉したりできていたのに仮にもソウルハッカーズの名前を継ぐゲームが交渉不可というのは一体全体どういうことなのだろうか。

これだけは本気で製作責任者に尋ねてみたいのだが、ソウルハッカーズの何を継承したかったのだろうか。
ソウルハッカーズとペルソナを業魔殿で2身合体してスキル継承しなかった理由は?

悪魔って必要?

本作は悪魔が「装備品」扱いとなっている。
つまり武器や防具のようなものなので、悪魔が戦闘にほぼ登場しない。
例えば「ピクシー」を装備して「ディア」を使っても、ピクシーは表示されず主人公がディアを使うような感じだ。
これはAion式召喚術のせいだと明言されているが、悪魔との接点が少ないのは気になる。
サバト中は出てくるが一瞬で汎用総攻撃エフェクトに巻き込まれて見えなくなる。寂しい。

敵のサモナーはちゃんと前作のように悪魔を召喚して出てくるのでさらに仲魔の存在感が無くなる。
ペルソナのようにスキル使用時に少し出てくるだけでもいいはずだ。
せっかく悪魔のビジュアルもライトユーザー向けに可愛くしたのに、滅多に出てこないせいで悪魔に愛着が湧かないのはサマナーとしてどうなんだ。

もはや悪魔がモノ扱いなので悪魔なんて最初からいなかったのかもしれない。

過去のNPCと会えたのは嬉しかった

『ソウルハッカーズ』のNPCはヴィクトル、マダム銀子などが続投。
他のお店の人達にも会いたかったが、贅沢は言えないだろう。
出てくれるだけで嬉しい存在だ。
DrスリルもBハワイフロストなどの説明文に名前が出てくる。

ネミッサが悪魔になってたのも最大限の過去作ユーザーへのサービスだろう。

それ以外のNPCも出てくるがそれぞれキャラクターデザインが良い。
ドンキ風のお店(ドンキホーテ)デラマンチャの店員、ユメもかわいい。なぜ仲間にならないんだ…!

探索エリアの狭さ、変な立地、不可思議さ

探索エリアは信じられないぐらい狭く、そのボリューム不足感を補うように意味もなく各店舗がバラバラに立地しているためかなり面倒だ。
またペルソナと比べるようで申し訳ないが『ペルソナ3』のポロニアンモールぐらいのエリアが2~3個といったところだ。
歌舞伎町っぽい歓楽街は片側の歩道のみ、新参道と名付けられた場所はデッキになっており片側はアクセサリー屋で片側は青空バーだ。
一つのエリアにお店は2つ程度しか無く(ちょっとした飲食物だけ買える内部構造の無い店舗がある場合もあるが)エリア移動が面倒。

もういっそ一箇所にまとめてくれたほうがロードが挟まらずにありがたかった。
前作『ソウルハッカーズ』では芝浜コアに行けばほぼショップコンプできていたことを考えると、フィールドは作りたくないがクエストの仕組み上いくつかのエリアは必要だという妥協と都合の産物のような作りだと感じた。

もしくはもっと大きな構想があって、開発規模縮小で今の形になったような雰囲気もある。

また全体的に作り込みが浅くゲームの都合で捻じ曲がった世界が広がっている。
デザインやスタイリッシュさ(中二病っぽさと言ってもいい)を重視するばかりでリアリティも生活感も全くない。

ヘイズルーンで行われるパーソナルイベントもかなり手抜きを感じる。
フルボイスで良かったのではないかと思うし、必ず瓶ビールを直飲みしているのもなんか面白い。
せっかくサーバーあるんだからヒューズさんに注いでもらいたい。
他のお酒も出て来ないしこれはビールを飲む動作しか無いんじゃないかと邪推してしまうほどだ。

セーフハウスでは主人公たちがミールを食べることができる。カッコつけてるがメシのことだ。
このミールを食べるシーンでも各種ミールに対応した食品のモデリングや食事モーションが存在しないため選んだのとは違うもの(ピザやハンバーガーなど)を食べている。
(上の画像はスパゲッティを選んでいるがみんな違うものを食べている)

このセーフハウス、当初はキャラクターとの会話などが楽しめるのかと思っていたが、メインストーリー以外では飯を食いに来るだけの施設だ。
特にこれといったイベントもなく、メシの種類が増えるだけ。
しかも全員揃って座ってるシーンはメインストーリー以外ではなぜかほぼ描写されず、食事も大抵一人欠けている状態で食べる。

内部を歩き回ることもできず、ただ選択肢が表示されるだけ。

セーフハウスの屋根は一部が崩落?しており雨ざらしなのだがそこで木を育てている。
PVなどから「ここでなにか植物を育てたりできるのかな」と思っていたが今のところ活用されていない。
だったら屋根修理しろ。

ソウルハックの死者蘇生はシナリオの陳腐化を招く

ソウルハック。
本作におけるもっとも重要なキーワードであり、死者を蘇生するリンゴの所属するAIonの奥義だ。
簡単に言うと対象の魂をハッキングして蘇生させてしまう。
この能力で生命を救われた3人+リンゴが本作のメインキャラクターだ。

しかしこのソウルハックのせいでシナリオがなんだか面白いことになっている。

まず初手でリンゴと共にAionから派遣されたフィグは恩田一郎にソウルハックしなかったこと、アロウのライバルであり親友のカブラギを主人公一行が殺したあとソウルハックで助けなかったこと……。
もちろん作中でもソウルハックはダメージが大きいので使わない方がいいという描写はあるのですが、この問題を解決するために「ソウル・マトリクス」があるため別にあと1~2回やってもいいんじゃないか?と思ってしまう。

今後どのキャラが死んでも「悲しい」よりも「ソウルハックすればいいんじゃないの?」という結論になってしまう。

こうならないためにもソウルハックは3回までしかできない、それ以上やったらAionが崩壊するみたいなハッキリとした設定があっても良かったはず。
このせいでストーリーはずっとモヤモヤすることになる。

3連続死者蘇生というカードが強すぎて「物語における最大の悲劇である死」が陳腐化しているのだ。

前提がこれではいかに百戦錬磨のシナリオライターでも厳しいのではないだろうか。

ダンジョンとソウルマトリクスの動線が微妙

『ペルソナ5』ではメメントスの攻略に達成感やクエストクリアのために潜る必要があったが、本作ではソウルマトリクスの味気なさとシステムの微妙さで潜る必要性を感じないのも問題だ。
ソウルマトリクスをクリアすると固有スキルのようなものが開放されるが「絶対ないとダメ」ってほどの性能ではないので気がつくとセーフハウスで「ソウルマトリクス行けや」と怒られることになる。(あんな手抜きダンジョンへ行かせようとするのは恐怖だが)

人によるだろうがクエストもペルソナほど豊富じゃないしストーリーも極微量で報酬が微妙なのでクリアしたいという感じにもならないのだ。
DLCクエストだけはストーリーがあるようだが、むしろこれが基本形じゃないのが不思議だ。

ソウルマトリクスという味気ない虚無のダンジョンへと喜んでいく人がいるだろうか。
道中もキャラクターの深掘りはなく、階層のボス戦のときにちょっとした過去の追体験と会話があるだけ。
目印になるものもないので手応えがない。
まだ同じテクスチャだらけとはいえ通常ダンジョンのほうがマシだ。

もはや子供に「ソウルマトリクスに連れて行くよ!」「やだ!」みたいなレベルの罰ゲームだ。

ダンジョンとソウルマトリクスを行き来したくなるようなギミックがあればよいのだが……。
ちょっとしたイベントパートしか無くても掘り下げたいほどの魅力をキャラクターの性格から感じないのは個人の感性の部分もあるかもしれない。
皆さんはどうだろうか?

キャラクターデザイン・声優は100点満点

本作で一番評価したいのはキャラクターである。
イラスト、声優さんの演技、モデリングなどキャラクター部分はすべて良かった。
デザインが素晴らしくどのキャラクターも初期衣装が最高にかっこいいのだ。
UIの雰囲気なども良くデザイナーさんのセンスが感じられた。

シナリオとゲームデザインがこの出来でもキャラクターやUIのデザインだけで十分に売れるだろう。
シナリオに関してはゲーム側のリソースによる制約もあっただろうが。

私は声優さんに詳しくないがどのキャラクターも個性がしっかりと感じられる素晴らしい演技だった。
特にリンゴの喋り方はまるで『ヨルムンガンド』のココ・ヘクマティアルのようでかっこよかった。

演出面も評価したい。
カットシーンでなく戦闘時に使われる3Dモデルのままボスの攻撃演出(アッシュ)があり驚いた。
攻撃演出も種類が多く戦闘中も目が話せなかった。

会話シーンのカメラワークはゆっくり回転させたり引いてみたりと色々やっていた。
あまり効果的ではない場面もあったが、おかしくもなかった。

3Dキャラクターの汎用モーションはそれほど多くないようで、立ち方が複数あると良かったのではないだろうか。
ミレディがどんな場面でも腰に片手を当てて若干ジョジョ立ちポーズになるのがちょっと面白く感じた。

音楽に関しては評価が難しい。
ペルソナに慣れてしまっているのでボーカルの入ってないBGMはすこし物足りなく感じるが、そういったバイアス無しで見ればRPGとして評価すべきクオリティのBGMだ。
ただあまり印象に残らないいい意味で場に溶け込んだBGMだと感じた。
ニーアなどでおなじみのMONACAなので悪いわけはないがゲーム側の印象の薄さのせいもありOP以外はおしゃれだが個性的な印象はない。

P5制服を着るとP5の戦闘曲が流れるので……。
ネミッサやメアリの服を着ると前作のOPなどが流れるのも素直に嬉しかった。

ただ着せ替えはダンジョンフィールド上では反映されず戦闘だけなのは驚いた。
シナリオの演出で通常時のモデルを使用しているからゲームの空気感を壊さない配慮だろうが、P3ですら移動時のキャラに反映されてたよなぁという気持ちは隠せない。

悪魔のモデリングは最高だった。
これだけかわいい悪魔たちをなぜ戦闘中表示しなかったり、リンゴと会話させないのか。
理解に苦しむ。

ダンジョン周りは無色で没個性だが、キャラクターは色彩鮮やかな美しさがある。

ストーリーにおけるキャラクターの扱いの雑さ

キャラクター同士の掛け合いも少ないながらそれなりに楽しめる。
もうちょっとフルボイスで数が多くても良かったんじゃないかとは思うが……。
パーソナルイベントも全部バーだけなので色々なお店に一緒に行ったりしたかった気も。


(DLCサイドクエストで初めてボックス席に座った。今後メインでもあるのかもしれないが、もっと活用しても良いはず。)

サブキャラクターの扱いにはかなり問題がある。
序盤のピークであるアロウVSカブラギ戦だが、カブラギの掘り下げがほぼ無いのでなんか急に俺のアロウに馴れ馴れしいやつが出てきた感がすごい。
カブラギの喋り方もデザインも好きなのにただただ暴走して死ぬので感情移入できなかった。

もちろんアロウと共に育った幼なじみなのはわかるが、アロウを殺したシーンはソウルハックとソウルマトリクスの回想で見れるがどちらも演出上半透明のデジタルっぽい容姿なのでカブラギの印象がない。

またカブラギとは急に出会って殺し合い→カブラギ死亡なのでカブラギの掘り下げもう少しやってくれないとリンゴみたいにポカーンとしてしまうのは仕方ないだろう。

かなり熱い展開っぽい演出なのだが、こちらはカブラギに思い入れがないから
「え、あの……大人なんだから話し合って解決できませんかねえ……」
となるし勝利後に
「え、殺すほど攻撃しなくても良くない?(ドン引き)」となる。
死亡後も「ソウルハックあともう一回ぐらいできないの……?」という気持ちにならないだろうか?

そもそも子供の頃から一緒に育った親友が「入った組織の違い」だけで死ぬまで喧嘩するのは意味不明ではないか?
カブラギ側は部下を殺られたから、という動機があるようだがそれ殺したの葛葉マンゲツさん。
別にファントムソサエティに脅されている描写もないし、カブラギくんもう少し柔軟にやれないだろうか。

ヤタガラスだってファントムソサエティのサモナーだったら保護してくれるだろう。ミレディのように裏切ってリンゴたちの仲間になっても良い。
最悪関係改善できなくても殺さずに解決する方法はいくらでもあっただろう。
こういうせっかく大人を主人公にしてるのに子供みたいなことしていると感じさせるポイントは随所に存在する。
本作の多くのキャラクターが未成年のカラーギャングみたいな思想で動いているのだ。

制作側はこのカブラギのシーンからプレイヤーに何を受け取ってほしかったのだろうか?

ソウルソサエティへの憎しみ?
でも別にソウルソサエティが脅したり人質とってカブラギを操ってた描写はない。

アロウとカブラギの男同士の友情と衝突?
殺すまでやるか?

サモナーという危険と隣り合わせのダークな雰囲気?
話し合えば解決できたのでは。

コヴェナントを求めるとおかしくなるみたいな説明も今のところない。
完全にクリアしたらこの疑問も解決するかもしれないが、このイベントの時点ではちょっと違和感は禁じ得ないだろう。

アッシュはまだ鉄仮面に近いので命の危険があるから仕方ない気もするが。

アロウはカブラギ、ミレディは鉄仮面、サイゾーはアッシュというパートナー的存在がいるのだが、こいつら全員に一切「常識的な話が通じない」。
ストーリーとして早くぶっ殺したいのはわかるが動機付けが滅茶苦茶なのでもうちょっと会話を大事にしたい。
だから悪魔とも会話できないのか?

総評:ソウルハッカーズの残り香は感じるが、本質的に全く別のゲーム

購入前に少しSteamのレビューが目に入ったのだが、そこに書いてあった内容が腑に落ちたので引用してみる。

スルスル進むけど味がしない水みたいなゲーム
女神転生にルパンを加えた濃厚スープが25年煮込むと水になるのはおかしい
たぶん鍋の中身を一回捨てていると思う。https://steamcommunity.com/profiles/76561198091013362/recommended/1777620/

このレビューが一番短く本作の特徴を言い当てている気がする。
前作やアトラス作品が好きな人にとってはこってりスープになるはずが水になっているように感じるだろう。

しかし本作から入った人にとってそれは水は水でもミネラルウォーターなのだ。
むしろ前作との繋がりなどは雑味になって水を濁してしまう。
水は水でも美味しいものはいくらでもあるが、その点は好みの問題も大いにある。
ミネラルたっぷりの美味しい天然水じゃなくても、ミネラルウォーターを名乗ることはできるのだ。

個人的にはいろはすのようなフレーバーウォーターだと感じた。
ソウルハッカーズの残り香は感じるが味はしない。

でもそういうものだとわかっていれば十分美味しいし楽しめるのだ。

悪魔、サイバーパンク、テクノロジーとオカルト、AIなどテーマ的なものはたくさん盛り込まれているがいまひとつ深掘りできずに中途半端だ。

つまり本作は前作『ソウルハッカーズ』が担った「新規層の取り込み」という仕事に忠実だったというわけだ。
難易度が低くいつでも脱出・回復できて何度でも挑戦できるダンジョンの仕組みなど明らかに他のアトラスのゲームとは難易度が低すぎる。これは新規層への配慮だろう。
見た目ばかり重視して内容がおろそかなのも、まるでサーカスのように人を引き寄せるという決意なのかもしれない。

しかし以前の記事で書いているが、いまさらアトラス作品に新規層の取り込みなど必要だろうか?

アトラスのゲーム戦略の謎『ソウルハッカーズ2』の立ち位置
どういうことなんだろう?

その役目はもう『ペルソナ』が十二分に果たしている。
女性や子供にも人気のあるペルソナは国内外でライト層を中心に大きな人気がある。

アトラスやセガのマーケティングは一体どうなっているのか大いに疑問があるのだが、アトラスの作品を心待ちにしている人がたくさんいるのである程度ゲームとして成立していれば売れるという判断だったのかもしれない。
あまりいいことではないと思うが。

開発の状況についても疑問が残る。
プレイしてみるとわかるのだが開発リソースが少なすぎたのではないかと感じた。
いやもう正直に言うがこれは未完成ではないだろうか。
納期に間に合わせるためにボリュームがかなり小さくなっている気がする。

反面バグ取りはかなり真剣にやったのだろう。
バグがないのは心の底から快適だった。
ボリュームを小さくしたからバグが想定よりも少なかっただけかもしれないが。

個人的にはペルソナチームが稼働しており、そちらに多くのリソースが割かれているのであれば本望だが、開発時期としては『真・女神転生V』の方かもしれないし音沙汰のない『Project Re Fantasy』かもしれない。

とにかく使えるリソースが少なくてイベントやダンジョンなどへ割くべき力が働かなかったのだろう。
延期してでももっと熟成させるという選択肢を取ってほしかった。

個人的にはアトラスのDLC・完全版商法は関わった人間全員10年間ソウル・マトリクス行きの重罪だと思っているが、本作に関してはむしろ完全版出した方がいいだろう。

本作の特にダンジョン・ソウルマトリクス周りの出来はベータ版レベルだ。

 

 

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